許可を取るための旅館業法徹底解説
旅館業許可を取得する為に、旅館業をどう解釈し、どう活用するのか、徹底解説します。
旅館業法は附則も含めて、わずか16条の短い法律です。
知事が許可を拒否できる理由は3つだけ
拒否できるのは、①構造設備が基準に適合しない場合、②設置場所が公衆衛生上不適当である場合、③申請者が破産状態であったり、禁錮以上の刑を受けていたり、暴力団員であったり、欠格事由に該当する場合です。②や③は稀なことですので、要は旅館業施設が構造設備基準に適合していれば、知事は許可を与えることが義務付けられているのです。
政令で定める構造設備基準とは
建築基準法違反の建築物でも許可は下りるのか
実際に、元々戸建住宅や共同住宅として使われていた建物で旅館業の許可を取得する場合、用途が変更となっているのですから、どこかに建築基準法上の違反事項が生じるのは当然のことです。その場合でも知事は許可を与えなければならないのです。
学校、認定こども園、児童福祉施設、社旗教育施設の周囲100メートル以内も許可を与えないことができる
しかし実際には、許可を与えないこととしている自治体は少なく、同条4項で規定している上記施設の管轄部局(教育委員会等)に意見を求め、そのうえで許可を与えている場合がほとんどです。
衛生管理要領は義務ではなく、事業者へのお願い
しかしこれはあくまで事業者にお願いであり、事業者・国民を拘束するものではありません。大阪府の「府旅館業衛生管理要領」には、その「第一目的」のところに「この要領は、旅館業における構造設備及び衛生に必要な措置に関する望ましい事項を定めることにより、旅館業における一層の衛生水準の確保及び向上を図り、併せて善良の風俗を保持することを目的とする。」と、義務ではなく行政指導の一環であることが規定されています。
旅館業許可が取り消される場合とは
ここでもポイントは構造設備基準を守っていれば許可が取り消されることは無いと言うことです。
各自治体での旅館業営業許可の要件
- 建築計画の届出⇒旅館業営業許可という二段階の申請となります。周辺110メートル以内に学校、保育所、公園等があると教育委員会との協議が必要となるため、申請から許可取得まで5ヶ月以上必要となる場合もありますので、早めの準備が必要であり、先行して民泊新法の届出を行って営業を開始することをお勧めします。
- 他の自治体に比して窓面積、トイレ、シャワー数、洗面数などの細かな規制があります。
- 周辺110メートル以内に学校、保育所、公園等があると、建物の色、ベッドを置く場合の設置基準など更に規制が強化されます。
ホテル・旅館営業
玄関帳場を有しない場合の必要な設備
学校、保育所、公園等が敷地周囲110メートルの区域内における場合の要件
近隣住民への周知義務
- 営業者等の氏名(法人にあっては、その名称及び代表者の氏名)
- 旅館業の施設の名称及び所在地
- 営業の種別
- 苦情等に対応する者の氏名及び電話番号
- 廃棄物の処理方法
宿泊者への説明内容
- 宿泊施設に備え付けられた設備の使用方法
- 廃棄物の処理方法
- 騒音等により周囲に迷惑をかけないこと
- 火災等の緊急事態が発生した場合の通報先及び初期対応の方法(防火、防災設備の使用方法を含む。)
旅館、ホテル用途の消防設備
簡易宿所営業
「札幌市旅館等建築指導要綱」に基づく「事前協議」が求められる
札幌市旅館業許可の主な内容
- 駐車場から直接客室に入る構造になっていないこと。
- 善良な風俗や健全な生活環境を害する意匠及び形態でないこと。
- 施設が学校、保育所、公園等の周囲200㍍の区域にないこと。但し保健所長が善良な風俗を害するおそれがないと認めた場合は除く。
- 20日間標識を設置すること
- 周辺住民その他関係者から説明を求められたときは説明会を開催すること。(周辺住民その他関係者とは、の範囲で)
- 玄関帳場の床面積は、3.3平方メートル以上であること。受付窓口は、縦及び横がそれぞれ1メートル以上である開口部を有し、幅0.3メートル以上、長さ1メートル以上の受付カウンターが通路面から適当な高さの位置に設けられていること。
- 玄関帳場がない場合は、近隣住民からの苦情等に対応する者の氏名、連絡先及び所在地を明示し、緊急時における迅速な対応を行う体制を整えること。
- 客室のうち浴室、便所、洗面所、踏込等を除いた部分の床面積は、その客室の定員に2.47平方メートルを乗じて得た面積以上であること。(簡易宿所の場合で階層式寝台を有する場合にあっては、1.65平方メートル)
- 客室にトイレが無く、共同トイレを設ける場合は、男子用、女子用の別に分けて設けられていること。
- 周囲300メートル以内の見取図及び配置図
- 設計概要書(客室及び主要部分の構造概要を記載)
- 各階平面図
- 立面図(4面以上で建築物、門及び塀の形態、意匠並びに色彩を明示)
- 玄関帳場を有する場合は、玄関帳場又は玄関帳場等の詳細図
- 玄関帳場を有しない場合は、旅館業法施行規則第四条の三に規定する事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備及び宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との間の客室の鍵の適切な受渡し及び宿泊者以外の出入りの状況の確認を可能とする設備の配置図
- 玄関帳場がない場合は、近隣住民からの苦情等に対応する者の氏名、連絡先及び所在地を明示し、緊急時における迅速な対応を行う体制を整えること。
- 営業施設の敷地内の屋外広告物の詳細図(設置箇所、形態、意匠及び色彩を明示)
- 給排水、暖房、換気、採光、照明及び防湿の設備の構造並びに仕様の概要
「宿泊者が利用する廊下、階段、昇降機その他の通路は、専用のものとすること」が求められる
新宿区旅館業許可の主な内容
- 客室には、次に掲げる営業の区分に応じ、それぞれに定める人数を超えて宿泊者を宿泊させないこと。
ア 旅館・ホテル営業及び下宿営業 規則で定めるところにより算定した1客室の有効部分の面積(以下「有効面積」という。)3平方メートルにつき1人イ 簡易宿所営業 有効面積1.5平方メートルにつき1人
- 営業従事者が客室その他の宿泊者の利用に供する場所までおおむね10分以内に到着することができる体制を確保すること。
- 玄関帳場又は代替設備に営業従事者を常駐させること。
全国一厳しい規制
- ホテル・旅館 玄関帳場代替設備が施設内に必要
- 簡易宿所 小規模宿泊施設(1客室で9名以内)の場合は施設外玄関帳場が必要
- 住区がある場合は専用の廊下、階段、出入口が必要
- 施設内又は施設外玄関帳場に職員の常駐が求められる
京都市旅館業許可の主な内容
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玄関帳場代替設備が施設内に必要旅館・ホテル営業の施設の構造設備の基準(条例8条)では、玄関帳場を設けない場合は、代替設備が設けられていいことになっていますが、京都市が他市と違うのは、それを旅館業施設内に設置することを求めている点です。(「玄関帳場代替設備を設けるときは、施設の内部に旅館 業法施行規則第4条の3第2 号に規定する設備を有する部屋を設けること」)
しかしこれは旅館業法違反の疑いが濃厚です。国は『旅館業法に関するFAQ』において、「(代替設備が)それぞれの機能が施設とは別の場所に存在したり、分散して存在したりすることは問題ありません。」と述べています。
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簡易宿所営業は代替設備認めず又、簡易宿所営業では、そもそも代替設備そのものを認めていません。
これについては、国は「法令違反にはなりませんが、今回の旅館業規制見直しの趣旨を踏まえ、適切なご対応をお願いいたします。」と都道府県・政令市を指導していますが、その趣旨にするものです。
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簡易宿所には施設外玄関帳場設置を求める簡易宿所の場合は代替設備を認めていない替わりに小規模宿泊施設(1客室で9名以内)の場合は施設外玄関帳場設置を認めています。これは旅館業施設内施設という位置付けなので、建築基準法の用途制限や「住区がある場合は専用の廊下、階段、出入口が必要」という規定も適用されます。よって共同住宅の一室に施設外玄関帳場を設けることは事実上不可能ということになります。又、職員を常駐させ、10分以内に到着することができる場所に設けることが求められます(条例10条1項4号)。
但し、複数の簡易宿所の営業者が、共同して一の施設外玄関帳場を設置することも、旅館・ホテル営業の施設の玄関帳場が施設外玄関帳場を兼ねることも可能です。(要綱9条)
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住区がある場合は専用の廊下、階段、出入口が必要条例8条1項10号は「玄関、客室その他の旅館・ホテル営業の用途に供する施設が存する建築物に住戸が存するときは、当該旅館・ホテル営業施設が当該住戸と明確に区画され、かつ、当該建築物の廊下、階段、出入口その他の避難施設に宿泊者と当該住戸の居住者の共用に供する部分が存しない構造とすること。」と規定されています。この規定は簡易宿所でも同じです。(条例9条)
この条項により、事実上マンション(共同住宅)の1室で旅館業営業を行うことは不可能になりました。よって京都市では1棟マンション全体で許可を得るか、戸建住宅で許可を得る以外に方法はありません。
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施設内又は施設外玄関帳場に職員の常駐が求められる4章 衛生に必要な措置の基準、15条1項13号は「次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に掲げる場所に、人を宿泊させる間駐在し、又は使用人等を駐在させること」と規定しています。施設外玄関帳場を設ける場合や玄関帳場代替設備を設置する場合は「施設におおむね10分以内に到着することができる場所」、玄関帳場を設ける場合は施設内に駐在させることが必要となります。
上記(1)から(4)は構造設備基準であり、それに違反すると最悪旅館業許可取消しの原因となるものです。しかしこの(5)は、「衛生に必要な措置の基準」であり、是正命令(条例20条2項)に反した場合には「50,000円以下の過料に処する(条例26条)」と規定されていますが、許可取消しの原因とはならないものです。